GRS認証とは何か。取引先に説明できるレベルでまとめました

素材調達アドバイザーの辻本恭介と申します。
樹脂成形メーカーの資材調達部に12年、その後リサイクル原料の商社を経て、いまは中小の成形メーカーやメーカー系のCSR部門から相談を受けて、再生材の調達まわりを手伝っています。

ここ2年ほど、同じ質問を本当によく受けます。
「取引先からGRS認証の有無を聞かれたんですが、あれって何なんですか」というものです。

厄介なのは、聞かれた側が調べても、出てくる解説がだいたい繊維業界向けだということです。
樹脂の調達担当者が読むと、自社の話なのかどうかがまず分からない。
そのうえ社内で説明を求められ、「なんだかリサイクルの国際認証らしいです」で終わってしまう。

この記事では、GRS認証について、調達の実務で必要になる部分だけを整理しました。
定義から始めて、取引先や社内に説明するときに誤解されやすい点、費用と期間、そして2026年時点でどうしても押さえておくべき「GRSそのものが変わりつつある」という話まで書いています。

読み終えたときに、会議で口頭説明できる状態になっていることを目指しました。

GRS認証とは、ひとことで言うと何なのか

最初に、説明用の一文を用意しておきます。

GRS認証とは、製品に含まれるリサイクル材料の量を第三者が検証し、あわせてその製造工程が環境面・労働面でも適切に管理されていることを保証する国際的な認証制度です。

長いと感じるかもしれませんが、この文には削れない要素が3つ入っています。
「リサイクル材料の量」「第三者が検証」「環境面・労働面も含む」の3つです。
このうちどれかを落とすと、説明として不正確になります。

運営しているのはTextile Exchangeという団体

GRSはGlobal Recycled Standardの略称で、運営しているのは米国の非営利団体Textile Exchangeです。

名前に「Textile(繊維)」と入っているため、樹脂の担当者からは「うちには関係ないのでは」と言われることがあります。
ですが実際には、GRSが対象とするリサイクル原料は繊維に限りません。
紙、プラスチック、金属、皮革といった幅広い素材に適用されます。

だからこそ、廃プラスチックのリサイクル事業者がGRSを取得するという事象が成立します。
Textile Exchange認定の審査機関である一般財団法人ケケン試験認証センターのTextile Exchange認証についての解説ページでも、対象素材の範囲が確認できます。

なぜ「認証」という形式が必要なのか

再生材を扱っていると、素朴な疑問が湧きます。
「うちは再生材を使っています」と自社で言えば済むのではないか、という疑問です。

これが通用しないのが、いまの調達の現実です。

再生ペレットは、見た目では再生材の比率が分かりません。
バージン材を混ぜても、外観からは判別できない。
色ムラの出方である程度の推測はできますが、それは「たぶん」の域を出ません。

つまり、再生材比率は自己申告に依存する情報です。
自己申告に依存する情報を、そのまま海外ブランドや大手メーカーのサプライチェーンに乗せることはできません。
だから第三者による検証と、その検証を記録した書類が要る。

GRSは、その書類を発行するための仕組みだと理解しておくと、話が早くなります。

取引先への説明で誤解されやすい3つのポイント

ここからが本題です。
私が現場で「そこ、ずれていますね」と指摘することが多い3点をまとめます。

ポイント1:20%と50%という2つの数字がある

GRSには、混同されやすい2つのしきい値があります。

  • 認証を取得するために必要な再生原料の含有率:20%以上
  • GRSのロゴを製品に表示するために必要な含有率:50%以上

この2つは目的が違う数字です。
認証機関であるインターテック・サーティフィケーションのGRS認証の解説記事にも、この区分が明記されています。

実務でどう効いてくるか。

取引先から「GRS認証品です」と言われたとします。
その材料の再生材比率は、20%かもしれませんし、100%かもしれません。
「GRS認証品」という言葉だけでは、どちらなのか分からないのです。

ですので、認証の有無を確認するときは、必ず含有率をセットで聞いてください。
「GRS認証はお持ちですか」ではなく、「GRS認証の対象製品で、再生材比率は何%になりますか」と聞く。
この一手間で、あとの手戻りがかなり減ります。

ポイント2:Scope CertificateとTransaction Certificateは別物

これがいちばん誤解されている点だと思います。

GRSでは、性格の異なる2種類の証明書が発行されます。

  • Scope Certificate(SC):その企業や事業所が、GRSの基準に適合していることを証明するもの
  • Transaction Certificate(TC):認証取得企業が取引ごとに発行し、その出荷分のトレーサビリティを保証するもの

SGSジャパンのGRS/RCS認証に関する案内ページでも、この2種類が区別して説明されています。

調達側が本当に受け取るべきなのは、TCのほうです。

なぜかというと、SCは「この会社は認証を持っています」という事実しか示さないからです。
認証を持っている会社が、認証対象外のラインで作った材料を出荷する可能性は残ります。
その取引がGRSの対象だったかどうかを担保するのが、取引ごとに発行されるTCです。

過去に一度、SCのコピーだけを受け取って安心していた案件に立ち会ったことがあります。
最終的にブランド側の監査でTCの提出を求められ、慌てて遡って取り寄せることになりました。
最初からTCを求めていれば起きなかった手間です。

ポイント3:GRSが見ているのは含有率だけではない

「リサイクル材の証明書」という理解でいると、監査の話になったときに面食らいます。

GRSの要求事項は、大きく次の領域に及びます。

  • リサイクル材料の含有率(プレコンシューマー/ポストコンシューマーの区分と証明)
  • サプライチェーン管理(原料から最終製品まで全工程を追跡する仕組み)
  • 社会的要求事項(労働者の人権保護、安全な労働環境、公正な賃金)
  • 環境関連の要求事項(エネルギーと水の使用削減、排水管理、廃棄物対策)
  • 化学物質管理(有害物質の使用禁止・制限)

つまりGRSは、素材の証明であると同時に、その素材を作る工場の運営に対する審査でもあります。

これは説明のときにきちんと伝えたほうがいい点です。
社内で「認証を取れば再生材が売りやすくなる」という文脈で話が進むことがありますが、実際には労働環境や排水管理まで見られます。
取得の難易度を正しく共有しておかないと、あとで現場が驚くことになります。

RCSとの違い。うちにはどちらが必要なのか

GRSとよく並べて語られるのが、RCS(Recycled Claim Standard)です。
同じくTextile Exchangeが運営しています。

両者の関係を表にすると、こうなります。

項目RCSGRS
再生原料の含有率(認証)5%以上20%以上
ロゴ表示に必要な含有率5%以上50%以上
トレーサビリティ(CoC)ありあり
社会的要求事項対象外あり
環境関連の要求事項対象外あり
化学物質管理対象外あり

RCSは、再生材が確かに入っていることを追跡する仕組みに特化した規格です。
GRSはそこに社会・環境・化学物質の要件を上乗せした、上位規格という位置づけになります。

選び方の目安を書いておきます。

再生材が入っていることを証明できればよく、まずは低いハードルから始めたいという場合はRCSが現実的です。
一方、取引先が海外ブランドで、サプライチェーンの労働環境まで確認を求めてくる場合は、RCSでは要求を満たせません。
GRSが必要になります。

どちらを取るべきかは、自社の都合ではなく取引先の要求水準で決まる。
ここは割り切ったほうが早いです。

認証取得の流れと、かかるコスト

取得を検討する立場の方向けに、実務的な情報も整理しておきます。

認証取得までの5つのステップ

  1. GRSの基準内容を理解し、自社の該当範囲を整理する
  2. 認証機関を選定し、申請する
  3. 書類審査を受ける
  4. 実地監査を受ける(書類確認、従業員へのインタビュー、現場視察)
  5. 指摘事項があれば是正し、認証書が発行される

実地監査で従業員インタビューが入るのは、前述した社会的要求事項の確認のためです。
書類だけ整えても通らない設計になっています。

費用と有効期間

費用については、インターテック・サーティフィケーションのGRS認証を取得した企業に関する記事で、数十万円から数百万円程度という幅が示されています。
事業所の規模や対象範囲によって変動するため、この幅は仕方のないところです。

見落とされがちなのが、認証の有効期間です。
GRSの認証は1年間有効で、維持するには年次監査を受け続ける必要があります。

つまり初回費用だけを見て判断すると、予算の見積もりを誤ります。
毎年の監査費用と、それに対応する社内工数を計算に入れてください。

なお、取得までにかかる期間については、信頼できる出典を確認できませんでした。
認証機関の混み具合や自社の準備状況で大きく変わる部分ですので、検討する場合は複数の認証機関に直接見積もりと期間を確認することをおすすめします。

2026年の重要な変化。GRSはMaterials Matter Standardへ統合されます

ここが、いま最も伝えておきたい部分です。

複数の認証機関が公表している情報によれば、Textile ExchangeはGRSやRCSを含む既存の複数規格を、Materials Matter Standard(MMS)という新しい規格へ統合していく方針です。

公表されている移行スケジュールは、次のようになっています。

時期内容
2025年12月MMSの最終基準とラベリングポリシーが公表
2026年4月移行ポリシーが公表
2026年12月31日MMSが発効し、訓練を受けた認証機関が審査を開始できるようになる
2027年12月31日MMSが必須化。以降、GRSなど既存規格の証明書は更新されない
2029年3月〜4月GRS等のTransaction Certificateの申請受付・発行が終了

この内容は、認証機関EcocertのMaterials Matter Standardの案内ページ、および認証機関USB Certificationが公表している移行ポリシーの解説で確認できます。

なお、Textile Exchangeの公式サイトについては、今回こちらの環境からアクセスができませんでした。
上記は認証機関2社の記述が一致している内容ですので、実際に判断される際は必ず認証機関に直接ご確認ください。

では、いまからGRSを取る意味はあるのか

「2027年末で使えなくなるなら、待ったほうがいいのでは」と考えるのは自然です。

私の見方を書きます。

まず、移行期間中は既存のGRS証明書を維持する選択も、早期にMMSへ移るという選択も、どちらも可能とされています。
いきなり無効になるわけではありません。

そして、GRS認証済みの材料や製品は、transition claimという扱いでMMS認証製品の適格な原料として受け入れられるとされています。
これまでの取得実績が無駄になる設計ではない、ということです。

そのうえで、より本質的な話をします。

GRSの取得には、含有率の管理体制、原料のトレーサビリティ、労働環境、化学物質管理といった実務の整備が要ります。
規格名がMMSに変わっても、この整備そのものが不要になるわけではありません。
むしろMMSの評価領域は天然資源と気候、労働基準と人権、動物福祉とされており、方向性としては同じ地平にあります。

ですので、「規格が変わるから何もしない」は、私はおすすめしません。
規格の名前ではなく、社内の管理体制を作ることが目的だと考えれば、いま動く価値は十分にあります。

サプライヤーを評価する立場の方も、同じ見方で構いません。
2025年や2026年にGRSを取得したという事実は、その事業者が第三者監査に耐える体制を作った証拠として、規格の移行後も評価に値します。

国内法との関係を混同しないこと

説明の場で、これも頻繁に混ざります。
GRSと国内の法規制は、まったく別の枠組みです。

改正資源有効利用促進法(2026年4月施行)

資源の有効な利用の促進に関する法律が改正され、2026年4月1日に施行されました。

改正では「指定脱炭素化再生資源利用促進製品」という枠組みが新設され、脱炭素化再生資源として再生プラスチックが指定されています。
一定規模以上の製造事業者や輸入販売事業者に対して、再生プラスチックの利用目標を含む計画の提出と、定期的な報告が求められる仕組みです。

ただし、対象となる製品の細目や提出期限の詳細は政省令に委ねられている部分があります。
弁護士が執筆している専門メディアBUSINESS LAWYERSの改正資源有効利用促進法の解説記事でも、詳細な基準が政省令に委任されている旨が指摘されていました。
自社が対象になるかどうかは、必ず最新の官報や所管省庁の公表資料でご確認ください。

ここで強調しておきたいのは、GRSを取得しても、この法律への対応にはならないという点です。
GRSは民間の国際認証、こちらは国内法です。
求められるアウトプットも違います。

社内資料で並べて書くと混同のもとになりますので、章を分けることをおすすめします。

プラスチック資源循環促進法

2021年6月に公布され、2022年4月1日に施行された法律です。
設計段階での配慮、自主回収・再資源化事業計画の認定申請、特定プラスチック使用製品の使用の合理化などが事業者の措置として定められています。

制度の全体像は、環境省のプラスチック資源循環に関するページにまとまっています。

エコマークとの役割の違い

国内の環境ラベルとしてよく知られているのがエコマークです。
公益財団法人日本環境協会が運営しており、ISO/IEC 17065の認定を受けた第三者認証として、商品類型ごとの基準に基づいて認定されます。
詳しくはエコマークの公式サイトをご覧ください。

GRSとエコマークは競合するものではなく、役割が違います。

エコマークは国内市場、特にグリーン購入法に対応した公共調達の文脈で効いてきます。
GRSは海外ブランドや輸出を含むサプライチェーンで求められます。

両方必要になる企業もありますし、片方で足りる企業もあります。
どちらが優れているという話ではありません。

GRS認証を持つ国内サプライヤーをどう探すか

最後に、調達側の実務の話をします。

再生材の調達で悩ましいのは、認証を持つ国内サプライヤーの情報が集約されていないことです。
繊維系であればブランド経由で情報が回ってきますが、樹脂となると急に見つけにくくなります。

そして、探すべき理由もあります。

一般社団法人プラスチック循環利用協会が公表している2024年のプラスチック製品・廃棄物のマテリアルフローによると、2024年の廃プラスチック総排出量は911万トン、有効利用率は89%でした。
ただし内訳を見ると、サーマルリサイクルが67%を占めており、マテリアルリサイクルは20%です。
さらにマテリアルリサイクル品のうち110万トンは輸出に回っています。

国内で樹脂を樹脂として再生し、完結させている事業者は、数字で見る限り決して多数派ではありません。
だからこそ、条件に合うサプライヤーを見つけたら関係を作っておく価値があります。

見つけたときに確認しておきたいこと

候補が見つかったとき、私が最初に確認するのは次の点です。

  • GRS認証の対象範囲はどこか(全製品なのか、特定の材料に限られるのか)
  • 対応できる樹脂の種類はどこまでか
  • 破砕から粉砕、洗浄、押出まで自社で完結できるか、外注が入るか
  • 買い取ってもらえない廃材の条件は何か

3つ目と4つ目は見落とされがちですが、重要です。
工程が外注に散っていると、トレーサビリティの担保が複雑になります。
また、どんな廃材でも受け入れる事業者は現実には存在しません。
異樹脂の混入品や薬品が付着したものは、通常お断りされます。
最初に条件を確認しておかないと、話が進んでから止まります。

実際の取得事例を見てみる

抽象的な話が続いたので、実例を挙げます。

繊維系では、東レ株式会社がリサイクル繊維ブランド「&+」でGRSを取得しています。
樹脂系では、武田精機株式会社が再生プラスチックのホック製造で取得しています。

樹脂リサイクルの専業でいえば、群馬県太田市に本社工場を置く日本保利化成株式会社が2025年4月にGRS認証を取得しています。
同社は廃プラスチックのマテリアルリサイクルを手がけており、PPやABSといった汎用樹脂からPEEK、PPSといったスーパーエンプラまで幅広い樹脂に対応し、破砕・粉砕・洗浄・押出の各工程を自社設備で行っています。
資源循環に対する考え方や事業の全体像については、日本保利化成株式会社のSDGs経営についてまとめられたページで詳しく紹介されています。

こうした事例を眺めておくと、認証を持つ事業者がどんな設備と体制を備えているのかの相場観がつかめます。
自社の要求水準を決めるときの物差しになりますので、比較検討の前に何社か見ておくことをおすすめします。

まとめ

長くなりましたので、説明用に要点を絞ります。

  • GRS認証は、リサイクル材の含有率を第三者が検証し、あわせて工場の環境面・労働面も審査する国際認証である
  • 認証取得には再生原料20%以上、ロゴ表示には50%以上が必要。「認証品」という言葉だけでは比率は分からない
  • 受け取るべき書類はScope Certificateではなく、取引ごとのTransaction Certificate
  • RCSは追跡に特化した規格、GRSは社会・環境・化学物質要件を加えた上位規格。どちらが必要かは取引先の要求水準で決まる
  • 認証の有効期間は1年。年次監査の費用と工数を見込んでおく
  • GRSはMaterials Matter Standardへ統合される予定。ただし管理体制の整備そのものが不要になるわけではない
  • GRSと国内法(改正資源有効利用促進法、プラスチック資源循環促進法)は別枠。混同しない

制度の名前を覚えることが目的ではありません。
再生材を使うという判断を、社内でも取引先でも説明できる状態にしておくことが目的です。

その意味では、GRSは道具のひとつです。
道具が変わっても、再生材をきちんと扱うという実務は変わりません。
そこだけ押さえておけば、規格の移行にも落ち着いて対応できるはずです。

ご不明な点があれば、認証機関は問い合わせに丁寧に応じてくれます。
社内だけで抱え込まず、早めに聞いてしまうのがいちばんの近道です。